男が危険を冒すのは、女がそういう男を選ぶから?――300体の人工生命を進化させたら、かなり露骨な結果が出た

平田智剛

男性は、なぜ危険を冒すのか。

それは、女性が「いい彼氏」を選ぶからかもしれない。

こういうことを言うと、フェミニストの皆様から、

「根拠のないミソジニー的言説だ」

と言われそうなので、今回、根拠を持ってきた。

300体の人工生命をコンピュータの中で進化させた。

そして、女性が「どんな男性をいい彼氏として選ぶか」を変えてみた。

結果は、かなり露骨だった。

女性全員に「危険を好む男性が好き」と設定すると、

男性risk = 0.994

女性全員に「危険を避ける男性が好き」と設定すると、

男性risk = 0.003

ランダムに男性を選ばせると、

男性risk = 0.088

だった。

女性の好みを変えただけで、

男性の危険選好が、ほぼ0からほぼ1まで動いた。

かなり乱暴に言えば、

男が危険を冒すのは、女がそういう男を選ぶからだった。

……という結果が出た。

もちろん、この言い方は少し乱暴である

申し訳程度に正確な話もしておく。

今回の実験は、現実の男女を観察したものではない。

300体の人工生命を使ったtoy modelである。

したがって、この実験だけから、

「現実の女性は危険な男性を好む」

「男性が危険な仕事をする原因は女性である」

「女性が意識的に男性を危険へ追いやっている」

などと証明されたわけではない。

ここは重要なので、ちゃんと書いておく。

そのうえで。

モデルの中では、本当に女性側の配偶者選好を変えただけで、男性側の危険選好が激変した。

これは事実である。

そして僕は、この結果を「男性の弱者性」を考えるうえでかなり重要だと思っている。

どんな実験をしたのか

難しい話を全部飛ばして説明する。

コンピュータの中に、男女に相当する二つの性を持った人工生命を300体作った。

この生き物たちは、ときどき危険な「戦闘」に参加する。

そして、それぞれが risk という遺伝的な値を持っている。

riskが高いほど、

自分が死ぬ可能性のある競争へ積極的に参加する。

この記事では、これをざっくり「危険を好む」と呼ぶ。

そして最後に繁殖する。

ここで、女性側は男性を選ぶ。

危険を好む男性を選ぶ女性もいれば、危険を避ける男性を選ぶ女性もいる。

すると当然、

女性から選ばれた男性ほど子孫を残しやすい。

つまり、

女性が危険を好む男性を選ぶ
↓
危険を好む男性が子孫を残す
↓
その性質が次世代へ残る
↓
男性集団が危険を好むようになる

という進化が起こり得る。

実際に起きた。

通常条件では、

女性risk = 0.086
男性risk = 0.502

となった。

男性の方が、はるかに危険を引き受けるようになった。

では、本当に女性の好みが原因なのか。

そこで今度は、女性の好みを人為的に固定した。

結果がこれである。

女性の選び方男性risk高risk男性を選ぶ0.994ランダムに選ぶ0.088低risk男性を選ぶ0.003

ここまで違う。

男性本人には触っていない。

女性が、

「私はこういう男性を彼氏にしたい」

と選ぶ基準を変えただけである。

それだけで、男性側の性質がほぼ正反対になった。

これのどこが「男性の弱者性」なのか

僕が面白いと思ったのはここだ。

危険を冒しているのは男性である。

戦闘に参加しているのも男性である。

だから表面だけ見れば、

「男が勝手に危険なことをしている」

ように見える。

そして男性の危険労働や死亡について話すと、

「男性社会が男性に押し付けているだけ」

「女性のせいにするな」

と言われることがある。

でも、今回のモデルではそう単純ではなかった。

実際に危険を冒すのは男性なのに、

その男性がどれだけ危険を冒すようになるかを、女性側の選択が大きく左右していた。

ここに、僕は男性の弱者性を見る。

男性は単に「自分の好きなように競争している側」ではない。

同時に、

選ばれる側でもある。

評価される側でもある。

落とされる側でもある。

ある種類の男性が選ばれ、別の男性が選ばれなければ、男性側には「選ばれる男」へ近づく圧力がかかる。

危険を冒す男が評価される世界なら、

危険を避ける男は、

「安全に生きられてよかったね」

で終わらない。

恋愛競争では負けるかもしれない。

子孫を残せないかもしれない。

そして何世代も続けば、「危険を冒さない男性」そのものが減っていく。

これはかなり残酷な構造だと思う。

男性は「危険を冒す側」であると同時に、「危険を冒させられうる側」でもある

もちろん、女性が男性に、

「戦争へ行け」

「危険な仕事をしろ」

と直接命令しているわけではない。

そんな話ではない。

もっと静かな圧力である。

「私は、こういう男性が好き」

たったそれだけ。

一人ひとりにとっては、完全に自由な恋愛選択である。

でも、それが集団全体で繰り返されたら?

「選ばれる男性」と「選ばれない男性」が生まれる。

そして選ばれた男性の性質が、次の世代へ多く残る。

だから、

誰かを自由に選ぶことと、その選択が相手側に何の影響も与えないことは、まったく別の話である。

男性が危険を冒している。

だから男性自身が原因だ。

男性自身で解決しろ。

女性には関係ない。

僕は、そこまで簡単に因果関係を切ってしまうことには疑問がある。

少なくとも今回の実験では、

男性側で起きている問題の原因が、男性側だけにあるとは限らなかった。

もう一度、正確に言う

最後に、ここまでかなり単純化して書いたので、研究として正確な表現に戻しておく。

今回示されたのは、

「繁殖コストの高い性が高riskの異性を配偶者として選ぶと、繁殖コストの低い性のriskが遺伝的に上昇し得る」

というtoy model内部の因果関係である。

しかも、単に男女を最初からそう設定した結果ではない。

繁殖コストを男女で逆転すると、riskが高くなる側も逆転した。

繁殖コストを同じにすると、安定したriskの性差はほぼ消えた。

そして女性側の選好だけを、

「高risk男性好き」

から

「低risk男性好き」

へ変更すると、

男性riskは

0.994 → 0.003

まで動いた。

この差は、男性というラベルに最初から「攻撃的」という性質を埋め込んで作ったものではない。

より正確に表現するなら、

繁殖コストの低い側が、高繁殖コスト側からの配偶者選択によって、高risk化する構造がモデル上で生じた。

ということになる。

そして現実の男女について何かを断定するには、

「現実の女性は、実際にどの程度riskの高い男性を好むのか」

という実データが別途必要になる。

そこまでは今回の実験では扱っていない。

だから、

「男性の弱者性が科学的に証明された!」

とまで書けば、さすがに盛りすぎである。

でも僕は、

「男性が自ら危険を冒しているように見える現象であっても、その原因まで男性側だけにあるとは限らない。その構造は少なくとも数理モデル上で再現できた」

とは言っていいと思っている。

男性が傷ついているとき。

男性が危険を背負っているとき。

男性が競争に追い立てられているとき。

「男が勝手にやっている」

「男性社会の自業自得」

だけで終わらせないでほしい。

男性だって、

他者から選ばれ、評価され、選別される側である。

その意味で、男性にも弱者性がある。

僕が今回の実験から一番伝えたいのは、それである。


実験方法、モデルの詳細、複数seedでの結果、95%信頼区間、200世代実験、性別反転実験、ソースコードまで含めた詳しい内容は、Qiitaの

「【性淘汰シミュレータ4】男性が攻撃的なのは、女性が攻撃的な男性を好むから? 日本語を覚えるLLM300体で実験した」

【性淘汰シミュレータ4】男性が攻撃的なのは、女性が攻撃的な男性を好むから? 日本語を覚えるLLM300体で実験した – Qiitaこの記事は思想強めである。 「女性が攻撃的な男性をパートナーとして選び続けた結果、男性が攻撃的でリスクを好むように進化するqiita.com

にすべて掲載している。

この記事ではかなり乱暴に単純化した。

★平田智剛さんは本も出版されて上記実験を掲載しています。

興味あれば手に取ってください。

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