男性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(案)

男性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(案)
前文
この条約の締約国は、
すべての人間が尊厳及び権利について平等であることを確認し、
性別を理由として、いかなる人も不利益な取扱いを受けてはならないことを認識し、
男性も女性も、政治的、経済的、社会的、文化的及び家庭生活において平等な権利と自由を享有すべきであることを確認し、
男性に対する差別、偏見、固定的な性別役割及び暴力を撤廃することが、男女双方の人権と社会全体の利益に資することを認識し、
次のとおり協定する。
第1条 男性に対する差別の定義
この条約において「男性に対する差別」とは、性別が男性であることを理由とする区別、排除、制限その他の不利益な取扱いであって、男性の人権及び基本的自由の享有又は行使を害し、若しくは無効にする目的又は効果を有するものをいう。
第2条 差別の禁止
締約国は、男性に対するあらゆる形態の差別を禁止し、これを撤廃するため必要な立法上、行政上その他の措置を講ずる。
第3条 法の下の平等
締約国は、男性が女性と平等に法の保護を受ける権利を保障する。
第4条 司法における平等
締約国は、刑事、民事、家事その他の司法手続において、男性が性別を理由として不利益な推定又は取扱いを受けないことを保障する。
第5条 推定無罪
締約国は、男性についても、すべての刑事手続において推定無罪の原則を完全に保障する。
第6条 公平な捜査
男性が被害者又は被疑者となる事件について、捜査機関は性別に基づく先入観を排し、客観的証拠を重視した公平な捜査を行う。
第7条 虚偽申告からの保護
締約国は、性犯罪、暴力その他の重大な犯罪について、虚偽の申告又は故意に虚偽の証拠を作成する行為からすべての人を保護するため、適切な制度を整備する。
第8条 雇用における平等
締約国は、採用、昇進、賃金、配置、解雇その他の雇用上の取扱いについて、男性に対する性別による差別を禁止する。
第9条 教育の平等
締約国は、男性が女性と平等に教育を受ける機会を保障し、男子生徒に対する不合理な差別を防止する。
第10条 奨学金及び教育支援
締約国が性別を基準として奨学金その他の教育支援を行う場合、男性に対する不合理な排除又は不利益が生じないようにする。
第11条 職業選択の自由
男性は、性別を理由として特定の職業又は職種への就業を強制され、又は不当に制限されてはならない。
第12条 健康及び医療
締約国は、男性が性別を理由として医療、健康診断、精神保健その他の保健サービスから不当に排除されないことを保障する。
第13条 男性特有の健康問題
締約国は、男性に特有又は男性に多くみられる健康上の問題について、研究、予防及び治療のための適切な施策を推進する。
第14条 暴力からの保護
締約国は、男性に対する身体的、性的、心理的及び経済的暴力を防止し、被害者を保護するための措置を講ずる。
第15条 家庭内暴力
男性が家庭内暴力の被害者となった場合にも、女性被害者と同等の保護、相談、避難及び支援を受けられる制度を保障する。
第16条 性的被害
締約国は、男性に対する性的暴力及び性的搾取を防止し、男性被害者が性別を理由として被害を軽視されないようにする。
第17条 性犯罪被害者としての男性
男性が性犯罪の被害者となった場合、捜査、裁判、医療及び心理的支援において、女性被害者と同等の権利を保障する。
第18条 固定的な男性役割の撤廃
締約国は、「男性は強くなければならない」「男性は泣いてはいけない」「男性が家族を養わなければならない」など、男性に特定の役割を強制する社会的偏見の撤廃に努める。
第19条 父親の権利
締約国は、子の養育及び成長において、父親が母親と平等に責任と権利を有することを保障する。
第20条 親子関係
締約国は、離婚、別居その他の家庭環境の変化に際して、父親と子との継続的な関係が不当に阻害されないよう適切な措置を講ずる。
第21条 育児休業
男性が育児休業その他の育児支援制度を利用する権利を保障し、男性が育児に参加することを理由とする不利益な取扱いを禁止する。
第22条 兵役及び危険負担
締約国は、兵役、徴用その他の生命又は身体に重大な危険を伴う公的義務について、男性のみを当然に対象とする制度を設ける場合、その必要性及び合理性を厳格に検討する。
第23条 社会保障
締約国は、年金、失業給付、生活保障その他の社会保障制度において、男性が性別を理由として不合理な不利益を受けないことを保障する。
第24条 政治参加
男性は、選挙権、被選挙権、公職への就任その他の政治活動について、女性と平等の権利を有する。
第25条 メディア及び社会的偏見
締約国は、男性を一律に加害者、犯罪者、無責任又は暴力的な存在として扱うなど、性別に基づく偏見を助長する表現の問題について啓発を行う。
第26条 データ及び統計
締約国は、犯罪、暴力、教育、雇用、健康、家庭その他の分野について、男性が受ける不利益を把握するため、男女別の統計及び調査を適切に実施する。
第27条 救済制度
男性が性別を理由とする差別を受けた場合、独立した機関、裁判所その他の適切な制度を通じて、迅速かつ実効的な救済を受ける権利を保障する。
第28条 監視機関
この条約の実施状況を監視するため、「男性差別撤廃委員会」を設置する。
委員会は、締約国から定期的に報告を受け、必要に応じて勧告を行う。
第29条 国際協力
締約国は、男性に対する差別の撤廃、人権保障、暴力防止、父親の権利及び男性の健康その他の問題について、国際的な情報交換及び協力を促進する。
第30条 基本原則及び発効
この条約のいかなる規定も、女性その他いずれかの性別の人の権利を縮小するために解釈されてはならない。
この条約は、男性と女性を対立させることを目的とするものではなく、性別にかかわらず、すべての人が尊厳、自由及び法の下の平等を享有できる社会を実現することを目的とする。
本条約は、所定の批准手続を完了した国について、必要な批准国数に達した日に発効する。
(柴犬)

